--/--/--    スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

嫌になるくらいの澄みきった深く遠い空と浮かぶ雲。

波ひとつない穏やかな海が広がる白い砂浜で、夏の日差しを受けたまま夢見るようにボクが倒れていた。





バイト先のコンビニに出勤したとたん、店長が僕に問いかけてきた。

「カズ、ユミは今日休みなのか?時間が来ても出てこないぞ。携帯も通じないし」

「あっはい、じゃこれが済んでからメール入れてみます。あいつメールなら返事よこしますから」

ユミは僕と同じ頃入った高校生で僕とあまり年が離れてないせいか、気も合いたまに一緒に遊びに行く事もあった。

大学の休みで田舎に帰省してる僕にとって、数少ない遊び相手だ。

同級生のほとんどが就職している中で、未だに学生を続けてるのは僕ぐらいのものだったから。

とりあえず手が空いたところで、携帯を取り出しメールを打つ。うろ覚えであわてて打った割には、すぐに返事が来た。どうやらメアドもあっていたらしい。

<はい ボクの調子はいつもどおりだけど 出勤って何?>

<だから さっきメールしたとおり 今日のバイトだよ 店長が 出勤してこない連絡も通じないって 怒ってるぜ >

<???>



これがそそっかしい僕と、ボクとのファーストコンタクトだった。

でも名前もしらなくて会った事もなかっけど…。



スポンサーサイト
そろそろ気付いても 良かったんだ

自分のそそっかしさと まちがいに

それと 運命…







<ボクにはわからないよ キミは誰??>メールの返信は疑問符が続く。

相変わらず文句を言う店長に、僕は冷静さを失っていたのかもしれない。

だいたいあのユミにこんな悪ふざけが思いつけるわけなんてないんだ。


<ざけんなよユミ 和也だよ いい加減にしてくれよ>

<さっきから ユミ ユミって それボクのこと??>

<なに言ってんだよ由美子 自分の名前だろ?>

何かおかしいとさすがに僕も感じ始めていた。


<由美子って それボクのなまえじゃない… それにキミの事しらない…>

<…>

僕は念のため確認しようと思った。

ユミがふざけてるのではとも思ったが。



<メアド yumi_kun@softdank.ne.jp で あってますよね?>

段々自信がなくなってきた…。



<違うよ ボクのは−だから _じゃない  嘘だと思うなら 0x0807xx720に かけてみて>


おそるおそる僕は、メールのとおりの番号にかけてみることにした。


「もしもし?聞こえますか?」

自分でも訳わからずおかしな口調になる。

「はい 聞こえてるよ これがボク ボクの声だけど わかるかな?」


携帯から聞こえてきたのは能天気なユミのいつもの声じゃなく、聞いた事もない知らない少女の声だった。

そしてその声は、僕とボクを巻き込んでいった運命の響きだったかもしれない。


硝子窓に映る青い空を ボクは眺め続けた

四角い空に現れては消える白い雲

いつしか四角い空は赤く染まり始め

白く覆われた僕の周りをも染め出してゆく

キミの声を思い出し空を眺め続けた 人生で一番長かった春の日




その日のバイトは散々だった。

僕の耳に残る聞きなれない声が、確実に聞き覚えられるまでこだまし続ける。

何をするのも的外れ、何をしてても上の空。

何故かその声が耳に残って、その事がその時はうまく理解できなくて。


怒りの収まらない店長の声も置き去りに、能天気なユミなんか打ち忘れて操られるままに帰宅の道を辿る。


何を食べたかも覚えてなく、いつ眠り込んだのかさえも頭の中から抜け落ちたそんな春の失われた一日だった。


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
携帯の向こうから聞こえる彼女の声と話に、いつしか明日の事さえも忘れむきになって答え続ける僕がそこにいた。




バイトから上がって部屋に戻り、ユミにメールを打つ。

明日は僕もユミも休みのはずだから何処かに出かけようと思って。

あれからユミもすっかり風邪が治っていたけど、シフトの関係でなかなか一緒にならない。

返信を待つ間読みかけの漫画を読むことにした。

だけど一時間もするうちに手にした漫画は読み終わってしまった。

もう一度同じ文面で送りつけると、暫くして携帯に着信が入った。

ユミからだと思いこんだ僕は、出てすぐ文句をいってしまったのだ、軽率にも。

「なんで、返信をよこさないんだよ」口を聞く前に頭ごなしに声をかけた。

「あっ、ごめん。でも、またまちがってるよね…」

聞こえてきた声は、忘れかけていたあの少女のものに気づかされた。

「ねえ、せっかくだから話でもしない?ボク暇してるんだ、あっユミとかいう子に用事があるのかな?」
「ああ、それは別にたいしたことじゃないから…、それに怒鳴りつけてゴメン」

何故たいしたことじゃないなんて言ってしまったのか今ではよく思い出せない。

何度も迷惑をかけた事へのおわびだったのか、それとも。

とにかくそう言って僕とボクとの風変わりな会話が始まった。

「和也…さんだっけ?ひとつ聞いてもいいかな?」

「いいけど、みんなオレの事呼び捨てだから…」

「じゃあ和也、ひとつ聞くよ。海って何処がいいの?」

淡々とした口調で聞かれた問いかけに、僕は暫く沈黙してしまった。


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
more open !?
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。